外資系企業の会社登記

アポスティーユと領事認証の違いと取得方法

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legalization

外国人や外国会社が登記名義人となる不動産登記や外国会社の登記の申請に添付する外国の公文書(Notary Publicによる宣誓供述書など)には、その外国にある日本領事館の認証(領事認証)やそれに代わる外国の関係官庁による証明文、アポスティーユ(APOSTILLE)は必要でしょうか?

その検討の前提として、まずは、領事認証制度及びそれに代わるアポスティーユについてご説明します。

領事認証とは何か?

まず、領事認証制度とは、外国の公文書が権限ある機関によって作成されたことを証明する制度です。
提出された外国の公文書がその外国の真に権限のある機関よって作成されたものであるか否かを、提出先国の官庁が判断することは通常、困難であると思われます。そこで、その外国公文書が真に権限のある機関よって作成されたものであることを、その作成機関が属する国の上位官庁が証明し、さらにそれをその外国に駐在する提出先国の領事等が認証する、という領事認証制度が、国際慣行として確立しています。

例えば、日本の会社謄本を中国(香港、マカオを除いて、後述するハーグ条約には加盟していません。)に提出する場合、以下の手続が必要になります。

  1. 会社謄本を外務省に持参又は郵送し、会社謄本を作成した登記官の職印が真正であることについて、外務省の証明(公印確認)を受ける。
  2. 駐日中国領事外務省の証明を認証する。

(地方)法務局 → 外務省 → 中国大使館

なお、以前は、まず、会社謄本を作成した登記官の職印が真正なものであることについて、その登記官が属する法務局又は地方法務局の長の証明(登記官押印証明)を受ける必要がありましたが、現在はこの手続は不要になりました。

これらの手続を経てはじめて、その会社謄本が日本の権限ある機関によって作成されたことを中国の提出先官庁に証明することができるのです。

アポスティーユとは何か?

外国の公文書が権限ある機関によって作成されたことを証明する手続のうち、領事等による認証を省略できる制度がアポスティーユです。領事等の認証を省略するため、ハーグ国際私法会議で採択され、昭和45年にわが国も批准したのが、「外国公文書の認証を不要とする条約」、いわゆるハーグ条約(注)です。

(注)ハーグ(ヘーグ)国際私法会議で採択された条約は30以上あり、いずれも、ある文脈の中で「ハーグ条約(ヘーグ条約)」と呼ばれることがありますが、それが常に特定の条約を指すわけではありません。同会議で採択された条約のうち、わが国が締結しているものには、本条約のほか、「遺言の方式に関する法律の抵触に関する条約」や「扶養義務の準拠法に関する条約」などがあります。

この条約により、締結国間(加盟国はこちらを参照)においては、領事等による外国公文書の認証が免除され、それに代えて、各締結国は、あらかじめ指定した機関(日本では外務省が指定されています。各加盟国の認証機関はこちらを参照)による証明文を付与することで、自国で作成された公文書の署名の真正、署名者の資格及び押印された印影の同一性を提出先加盟国に対して証明することとされています。

この証明文を「アポスティーユ(APOSTILLE)」と言い、わが国では、公文書自体に奥書するのではなく、付箋を添付することから「付箋による証明」とも呼ばれています。

例えば、日本の会社謄本を香港(中国のうち、香港とマカオの2つの特別行政区のみがハーグ条約に加盟しています。)に提出する場合、以下の手続が必要になります。

  1. 会社謄本を外務省に持参又は郵送し、会社謄本を作成した登記官の職印が真正であることについて、外務省の証明(アポスティーユ)を受ける。

(地方)法務局 → 外務省

領事認証が不要な分、多少手続が簡略化されています。

なお、加盟国においても、用途によっては、領事認証が必要とされるケースもあるようですので、事前に提出先に確認しておくことが必要です。

登記の申請に添付する外国の公文書に領事認証やアポスティーユは必要か?

外国人や外国会社が登記名義人となる不動産登記や外国会社の登記の申請に添付する外国の公文書(Notary Publicによる宣誓供述書など)には、その外国にある日本領事館の認証(領事認証)やそれに代わるその外国の関係官庁による証明文、アポスティーユ(APOSTILLE)は必要でしょうか?

結論から言えば、原則として、いずれも不要とされています。

その理由は以下のとおりです。

まず、日本は、領事認証制度を採用していません。つまり、外国の公文書を日本の官庁に提出する場合でも、その外国に駐在する日本の領事等の認証を受ける必要はありません。

次に、アポスティーユは、そもそも領事認証を省略するための制度ですので、領事認証制度を採用していない日本の官庁に提出する場合には、当然アポスティーユは不要、ということになります。

よって、登記申請に添付された外国公文書に領事認証又はアポスティーユが付されていない場合でも、登記官が権限ある機関により作成されたものであるとの心証を得られれば、その登記申請は受理される、ということになります。

さらに言えば、登記官は、各国の制度に精通しているわけではないので、作成者の資格が明示されていない、Notary Publicの任命期間が終了しているなど、その外国公文書の真正性に明らかな疑義がない限り、その効力は認められるものと思われます。

少なくとも私が担当した案件においては、Notary Publicによる宣誓供述書などの効力が問題とされたことは一度もありません。

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