外資系企業の会社登記

外国の住所を登記する際に注意すべきこと

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street address

カタカナに引き直して登記することが原則

外国人が役員である場合や外国会社が合同会社の社員である場合において、その氏名又は名称及び住所は、外国文字で登記することはできません。
その場合は、その外国文字を漢字とカタカナに引きなおして登記することになります。
ただし、中国や台湾、韓国などで漢字が使用されている場合は、原則として、そのまま登記することができます。

外国の住所をカタカナ表記に引きなおす法則は、訳者によってさまざまだと思います。ご参考までに、私が翻訳する際に注意していることをいくつかご紹介します。

国名は正式名で表記する

まず、国名の表記は、原則として、正式名で登記すべきでしょう。正式名は、外務省が作成した国名表によるべきといわれることがありますが、その国名表は、外務省の内部文書であるらしく、私自身も見たことがありません。そこで、私は、外務省のホームページで使用されている表記に従っています。

ただし、いわゆるイギリスの場合は、正式名(グレートブリテン及び北アイルランド連合王国)があまりに長く、かえって分かりにくいので、慣例に従い、単に「英国」と表記しています。

また、タックスヘイブンであるケイマン諸島やヴァージン諸島の場合は、「英領」と冠記しています。

地名の表記のしかた

次に、地名の表記ですが、国名を除き、原則として、外国語の音訳をそのままカタカナにしています。これは、外国文字での登記ができないため、本来の発音になるべく忠実に音訳し、本来の外国文字での表記を再現できるようにするためです。

行政区画については、「州」、「郡」、「市」などの訳語を使用してよいとされていますが、私は「州」以外は入れていません。また、StreetやAvenueなどのストリート名も、「○○通り」などとはせず、そのまま「○○ストリート」や「○○アヴェニュー」と表記しています。

地名のカタカナ表記は、関連会社等で既に登記されたものや官公署に届け出たものがある場合には、それに合わせるのはもちろんですが、クライアントが普段から使用しているものや、その他の契約書等に使用されているものなどがある場合には、それらに合わせるようにしています。

それらがなければ、Google Mapや信頼できそうなウェブサイトで一般的な表記を確認しています。

アメリカの住所を想定して、具体例で確認してみましょう。

アメリカの住所の表記は、原則として、以下の語順になります。

1.Street Address:番地、ストリート名(+アパート番号又はスイート番号)
2.City (+County):市名や郡名
3.State:州名
4.Zip Code:郵便番号
5.Country:国名

具体的には、以下のような表記になります。

123 Orange Street, New York, NY 10001 USA

英語圏の住所は、原則として、小さい順に書いてありますので、先ほどの住所を日本語カタカナ表記に訳すと、

アメリカ合衆国10001ニューヨーク州ニューヨーク、オレンジ・ストリート123

という感じなります。

ただし、アパート番号又はスイート番号がある場合は、ストリート名の後に入りますので、注意が必要です。日本式の語順で訳せば、アパート番号又はスイート番号が一番後ろに来ますので、そこだけ語順が入れ替わります。

123 Orange Street, Suite 101, New York, NY 10001 USA
アメリカ合衆国10001ニューヨーク州ニューヨーク、オレンジ・ストリート123、スイート101

もうひとつ、細かいことですが、カンマをつける位置にも決まりがあります。
単語の切れ目ごとに、いちいちカンマを入れたくなりますが、

1.ストリート名の後
2.アパート番号又はスイート番号の後
3.市名の後

に入れるのがルールされています(上記の例で確認してみてください。)。

外国の住所でよく使われる省略形

アメリカの住所表記では、さまざまな省略形が出てきます。代表的な省略形の事例をご紹介したいと思います。

まず、州名は、大文字の省略形で記載されるのが一般的です。
代表的な州の省略形は、以下のとおりです。

NY = New York(ニューヨーク州)
DE = Delaware(デラウェア州)
CA = California(カリフォルニア州)

その他の州については、USPSのサイトの一覧表をご参照ください。

次は、道路の種類の名前です。
アメリカでは、原則として、すべての道に名前がつけられていて、住所は、「○○ストリートの××番地」という感じで定められています。
主な道路の種類は、以下のとおりです。

St. = Street(ストリート)
Ave. = Avenue(アヴェニュー)
Rd. = Road(ロード)
Dr. = Drive(ドライブ)
Blvd. = Boulevard(ブールバード)

これらの前に道路の名前を付けて、「Sunset Blvd.」などと表記します。

「Dr.」や「Blvd.」は、ちょっとマイナーかもしれません。

なお、ストリート名に、「E.」や「W.」などが付いている場合があります。もちろん、これらは、「East」や「West」の省略形ですが、これらを含めてストリート名ですので、これらを省略したり、語順を入れ替えて訳したりすると、本当の住所が分からなくなってしまいますので、注意が必要です。

また、アパート番号やスイート番号の前に付く「Apartment」や「Suite」は、「Apt.」若しくは「Ste.」又は単に「#」と表記されることが多いです。
これらが付いている場合には、アパート番号やスイート番号だと分かります。逆に、これらを落としてしまうと、現地では、間違った住所と判断されることがあります。

さらに、会社の住所によく見られる「PO Box」とは、「post-office box」の略で、私書箱という意味です。

最後に、SPCの住所でよくある表記に「c/o」があります。これは、「care of」の省略形で、日本語では、「気付(きづけ)」という意味です。タックスヘイブンのSPCは、現地の法律事務所や代行会社の住所を登録事務所(registerd office)としていることが多いので、「c/o Offshore Incorporation Centre」などと表記されています。

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